いたずらっこの太郎は、ある日お母さんから、虫の姿をしたおかしな神様の話を聞きます。
いたずら虫や、泣き虫、おこり虫に、ひねくれ虫・・・そして、どうやらいたずら虫のクルクルは、太郎に取りついているようなのです。
この物語は、太郎が考えたおかしな虫の神様の物語と、現実世界の出来事が交差して進んで行きます。幼いころの出会いが大人になってから実を結ぶところなどは、コロボックル物語に通じるものがあります。
それもその筈、この二作は共に、「井戸のある谷間」を長編に仕立てようとしている過程で生れた作品なのです。
最初に考え出された長編の構想は、残念ながら完成には至りませんでした。
しかし、佐藤さとる先生は、再度、新たに構成を立て直し、全く別の物語に作り変えることを試みました。そして、その結果生れたのが、「だれも知らない小さな国」だったのです。
一方、「てのひら島はどこにある」は、「だれも知らない小さな国」の完成後、数年の間そのままになっていた初期構想に基づいた原稿を集約し、新たに仕上げた作品です。
ですから、この作品はコロボックル物語の原型とも言えるでしょう。
佐藤さとる先生もこの作品を「だれも知らない小さな国」の姉妹編と位置づけていて、あとがきで、『さんざん手古ずらされたためか、「てのひら島」は私の最も好きな作品となってしまった』 とも書いています。
私も、想像と現実がくるくると切り替わるリズム感がお気に入りの一冊です。
コロボックルの原型が虫だったというのも意外な発見でした♪
「だれも知らない小さな国」の中に、コロボックルが飛びまわる姿をこおろぎのようだったという風に描写している所があるのですが、そのイメージもそういうところから生れたものだったのかなぁ。。。などと思ってしまいました(^^)
この本は理論社から1965年に出版されました。
他に、佐藤さとる全集七巻や、講談社文庫佐藤さとるファンタジー童話集Xに収録されています。
2003年3月に理論社より『新・名作の愛蔵版』として、再版されました。
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表紙の画像もごらんになれます。