ひまわりの展覧会へのみちしるべ
2003年11月

■2003/11/04 (火) レンブラントとレンブラント派展

レンブラントに特に強い思い入れがあるわけではないのですが、有名なわりに、一度もきちんと見たことのない画家だったことに気がついて、この展覧会にいってみました。
こういう大御所の傑作って、海外に行かなくてはみることができないので、私のような行ったことのない人間にとっては、なじみがあるようで実はまったくないんですよね(^^;

「レンブラントとレンブラント派展」というタイトルからして、レンブラント本人の作品は少しだけで、弟子の作品ばかりみることになるのだろうと覚悟していたのですが、版画もふくめれば、レンブラント作品が、3分の1くらいは占めていたのではないかと思われます。
個人的には、見にきた甲斐はあったと納得できる量でしたし、予想していたよりは、楽しめました。

展示してある作品の大半は、宗教や、神話に画題を求めた作品で、一部、自画像や風俗画が含まれていました。
画題に統一感があった上、当然、レンブラント様式に基づいた作品ばかりだったので、会場全体が、落ち着いた雰囲気に仕上がっていたような気がします。
まぁ、ぶっちゃけて言うならば、暗いトーンの画面の中に、人物が浮かび上がるような絵がいっぱい並んでいた、という感じでしょうか。

実は、私、宗教画のように、話の内容を知っている人にはわかるというタイプの、お約束事が多い絵って、知識がないだけにどれも同じように見えてしまって、しまいには退屈になってしまう悪癖があるんです。
多分、宗教画というものを、きちんと正視した経験がないためだとは思うのですが、、、
いかんせん、いまいち入り込めない世界という先入観が強すぎるようです。

そんなわけで、退屈を防止するためにも、この展覧会に関しては、レンブラントと彼の師匠や弟子の作品を見比べることで、彼の作品の中にあって、他の人にないものを見極めようという視点にたって、作品を鑑賞していました。
比較対象があることで、なぜこの人がこれほど高い評価を得ていたのかということも、おぼろげながら見えてきたような気分にはなれました。

ここに展示してある作品を見ただけで、こんなことを言うのはおこがましいのですが、レンブラントの凄さを一言で言うのならば、「無駄がない」ということではないかと思います。
過剰な装飾は全くないし、最小限に筆を走らせることで、最大の効果を生み出す感覚に長けた人だったのでしょう。
人物のポーズひとつとっても、動作の一つ一つ、すべてがドラマを生み出すためには欠かすことができない重要性を秘めているように感じられるんですよね。
最小限の動きだからこそ、見る側の想像力を掻き立てくれるのだと思うし、それが彼の作品の最大の魅力なんだと思いました。

これは、私の持論なのですが、いわゆる名画といわれるような作品の中に登場する人物像は、どれも手足が非常に雄弁にメッセージを発していると思うんです。
レンブラントの作品には、手足のみならず、全身でメッセージを発していると感じられるほどの物語性がありました。
聖書の世界を幻視しているような錯覚に陥らせる何かがあったと思います。

個人的に好きだったのは、「聖ペテロの否認」
ろうそくの光の中に浮かび上がるペテロの表情と女の人の表情のコントラストが非常に印象的な作品でした。

そうそう、先ほど紹介したHPには、音声解説がついています。
この内容、多分、美術館で500円くらい出すと聞くことができる音声ガイドの内容の使い回しではないかと思います。
(*注* 私は音声ガイドを使わなかったのであくまでも推測です。違っていたらすみません。)
単調な喋りがちとつらいですが、ちょっとだけお徳感のあるHPだと思います(笑)

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■2003/11/17 (月) 「フェアリーテール 妖精たちの物語」

ここのところ、思うように時間が取れなくて、こちらの更新が滞っています。
行ったけど、書いていない展覧会がすでに3つほどたまっています。
…どうしよう。
これもとっくに終わってしまった展覧会です。
せめて残りは、会期が終わる前に書けるように頑張ります★

埼玉県立近代美術館で開催されていたこの展覧会、なかなかコアな内容でした。(^^;
児童書の原画展を見に行くような気分でいたんですけど、会場には、おおよそ子供とは縁のない、ビクトリアン・アートがずらりと並んでいました。
なんというか、ラファエル前派のけだるさと、脳内イメージだけで描いていること受けあいの、いっちゃっている感の強い絵のオンパレードでした。

おそらく、妖精画というものが成立した時代の妖精のイメージを検証する、というのがこの展覧会のテーマだったのではないでしょうか?
妖精画というジャンルに、当時、なにかしらのニーズがあったことは確かなんでしょうけど、この展覧会を見ただけでは、それがいまいち見えてこなかった気も…。
あくまでも推測なんですけど、現在の日本におきかえるならば、球体関節人形を楽しむようなタイプの人たちが妖精画を見て楽しんでいたのではないかと思わせるものがありました。

ま、シェイクスピアの作品に登場する妖精たち(EX;「真夏の夜の夢」とか「テンペスト」など)を絵画化した作品だけをとりあげたコーナーがあったり、蝶の羽を絵の具代わりにして妖精を描いた作品など、この展覧会でなければ、目にすることは少なそうな作品を、多数目にすることはできたので、それなりに満足感は味わえたように思います。
ちょっと脱線しちゃいますが、この蝶の羽を使った作品を見たとき、思わず、法隆寺の玉虫厨子ってこんな感じの色をたたえていたんだろうか?と想像せずにはいられませんでした。

個人的に面白かったのは、コナン・ドイルが関わって有名になった、「コンティグリー妖精事件」(妖精を撮影した写真がドイルによって紹介され、その真偽が問題となった出来事)を紹介していたコーナーです。
ドイルの叔父が描いた妖精画も何点か展示してあったのですが、ヘンリー・ターガーを彷彿とさせるような、素朴なんだけど危なっかしい絵で、ちょっと目を離しがたい魅力がありました。
ドイル家ってちょっとオカルトティックな傾向がある家系だったんですね。
とりあえず、この事件を取り上げた本が出ていることが判明したので、近々チェックしてみようと思っています。

残念だったのは、アーサー・ラッカムの作品が、書籍のみで、原画がまったく展示されていなかったこと。なまじ作品があるだけに、ちょっと欲求不満になってしまいました。

あと、びっくりしたのが、妖精の衣装を着て写真を撮ろう!というよくわからないコーナーがあったことです。
展覧会会場で、コスプレですか!?とちょっと引いてしまいました。
コーナーの中には、背中につける妖精の羽とか、造花でかざりたてた帽子とか、かなり気合のはいった衣装が所狭しと並んでいました。
おそらく、子供を対象にした企画なんだと思うんですけど、私が通りかかった時には、大学生くらいの二人組みの女の子がすごく楽しそうに衣装を選んでいました。
記念写真はいっぱい貼ってあったので、それなりに好評なんだとは思うんですけど。。。なんというか、展覧会とは別の意味で、いっちゃっている感が漂っておりました。

正直言って、シシリー・メアリー・バーカーの原画があるといいな、なんて思ってでかけた人間(私のことです)なぞは、お呼びでない展覧会だったように思います。
でも、なぜかグッズ売り場は、シシリー・メアリー・バーカーのオンパレード。
原画が見たくて行ったのに、物だけ売られてもねぇ。。。とちょっと複雑な気分になりました。

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