ひまわりの展覧会へのみちしるべ
2004年7月

■2004/07/24 (土) 空海と高野山展 その1

この展覧会東京国立博物館で5月中旬までやっていました。
非常に今更な話なのですが、せっかく行ったので、ちょっとだけ感想を書いておきます。

メインは運慶の作った八大童子像。
ポスターにも制多伽童子がかっこよく登場していました。
それ以外にも、仏教美術に興味がある人間ならば、見ておきたいと思う作品がふんだんに出展している贅沢な展覧会だったと思います。
会場内は、空海が仏教美術に与えた影響はもちろん、高野山というところがいかに大きな力をもっていたのかということを、体感できる迫力に満ちていました。

個人的には、「阿弥陀聖衆来迎図」という縦2m以上もある3幅の作品を見た事が、最大の収穫でした。…というかこれ見たさにこの展覧会にいったのですが(^^;
阿弥陀来迎図というのは、阿弥陀さまが、臨終の床にいる人間を、極楽に迎えにわざわざ現世までお越しくださる、という人間のエゴが剥き出しになった図像です。
平安時代ごろに日本で非常に流行して、いまでもかなりの作品が残されています。

阿弥陀さまのような、えらい方を呼びつけるということ自体、かなり不遜な話だと思うので、信仰の利己的な部分が露骨にでている感じがして、個人的には、そのわかりやすさがおかしくてなりません。
ただ、わかりやすい分、イメージが湧き出るんでしょうかねぇ?作品としては美しい作品が多いのが特徴です。
私も、仏画のなかでは一番好きなジャンルだったりします。

今回展示してある作品は、来迎図の中でも最高傑作として名高い作品だったので、私も常々一度目にしたいと思いつづけていました。
ですから、待ちに待ったその機会がやっときた!という感じだったんです。

阿弥陀さまのまわりを取り囲む聖衆の表情の多様性や、音楽を奏でる描写のゆたかな表現力は、図版で見た以上の美しさでした。
整然とした人物配置がもたらす全体的な構図の緊張感と、楽器につけられた花の文様や、冠や瓔珞などの装飾品の優雅さがもたらすリズム感が、非常に心地よい作品だったと思います。
なんといっても、サイズが大きいので、見るものに迫ってくる迫力が違うんですよね。
展覧会会場でそうなんですがら、これをお堂にかけて見たときには、その荘厳さは比類ないものだったんだろうなぁと文字通り見ほれてしまいました。
描いた人のイマジネーションの豊かさをこころゆくまで堪能することができました(^^)

心残りだったのは、唐代につくられた諸尊仏龕をじっくり見れなかったこと。
小さな立体作品なので、人が多くてよく見ることが出来ませんでした★
実は、「阿弥陀聖衆来迎図」と入れ替えで展示する予定の「仏涅槃図」を見に、もう一度出かけるつもりだったので、そのときでいいや、と思っていたんですよね。。。
でもなんだかんだで結局行くことができず、そのままになってしまいました(TT)
やっぱり見れるときには、貪欲に見るようにしなくちゃ駄目ですね。
反省しています。

そうそう。仏教美術とはぜんぜん関係ないのですが、歴史の教科書などでよく目にする織田信長の妹のお市の方の肖像画も、展示してありました。
思わぬところで、思わぬものを目にすることができたので、ちょっと印象に残ってしまいました(笑)

TOP

■2004/07/25 (日) 栄光のオランダ・フランドル絵画展 その1

東京都美術館で、7月初旬までやっていた展覧会です。

タイトルはいちおー「オランダ・フランドル絵画展」となっていますが、実際は、寡作でしられる17世紀の画家フェルメールの「画家のアトリエ」という作品一枚だけで、どれだけお客を引っ張るかというコンセプトに基づいて企画された展覧会だと思います。

はっきりいって、私は、こういう企画は、好きじゃありません。
そりゃフェルメールの作品を日本で見られる機会は、ほとんど無いですし、一枚だけでも充分集客力がある作品だとも思います。
でも、それなら、他の作品は添え物って扱いでいいんでしょうか?
レンブラントとか有名どころが無いわけじゃないし、切り口次第では、もっと見せられるような絵もあった気がしましたよ。
もう少し、他の作品を生かすことができる企画を考える努力をしてもいいんじゃないでしょうか?

そういえば、ウィーン美術史美術館って比較的定期的に、日本に作品を貸し出している気がするのですが、いつも作品をズラッと並べるだけの企画になってしまう気がします。
貸す側の体質的なものもあるんでしょうか???ちょっと謎ですね。

あ、なんか話がそれてしまいました(^^;
本題にもどりましょう。
以前にも書いたことがあると思うのですが、私、東京都美術館ってもともと苦手なんです。
こういう企画自体が好感がもてないことは事実ですが、それならそれで、フェルメールの作品を最高の状態で見せる努力をしてくれれば、こんなに文句もいいません。
でも、東京都美術館がこういうもったいぶった豪華一点主義の作品展をやるときって、いつでも3階にある一番最後の展示室に、必要以上に照明を暗くして、作品を展示するのが定番なんです。
わざと見難くすることによって、見せてくださっていることに、ありがたみを感じろとでもいうんでしょうか?

しかも、会場内には、なんとフェルメールの作品を一番前で見るための行列まで出来ていたんです!
それだけで、うんざりな感じでしたけど、まぁ観念して並びました。
ここまできて見ないわけには行きませんしね。
でもね…一番前で見た人は、作品の前では立ち止まって鑑賞してはいけないんです。
警備の人は「立ち止まらないでください!」とずっと叫んでおられましたが、絵を見にきた人間にむかってそりゃないでしょう。
けっこう、美術館としてはありえない状況だと思います。
少なくとも私は、作品の前で立ち止まらないでくださいと警備員に言わせている美術館は、ここ以外知りません。
もう少し鑑賞するということに関して、見る側に配慮する努力をしてくださいと、切に願わずにはいられません(ため息)
あー、この展覧会の感想を書こうとおもったら、きっと文句ばっかりになるんだろうなぁとは、書く前から思っていたのですが、予想通りでした。

肝心のフェルメールですが、評判に違わぬ美しさを誇っていました。
細かいところまで見れば見るほど、引き込まれそうな魅了に満ちた作品だったことは、言うまでもありません。
なんとなく、もっと小型の作品かと思っていたのですが、それなりの大きさ(120×100cm)だったことも意外な感じでした。
フェルメールのブルーほど、人を穏やかな気持ちのまま、作品世界に引き込む青はないなぁ。。。としみじみ思ってしまいました。
フェルメールの作品ってやっぱり、本来の所蔵館へこちらが出向いて、こころゆくまで静かに鑑賞するべき作品なんだということがよくわかりました。
今回は、現物確認をしにきたと割り切って、いつかはウィーンでじっくり鑑賞しなくては!と決意を新たにして、美術館を後にしました。

TOP

backhome next