■2003/09/20 (土) アレクサンドロス大王と東西文明の交流展 |
最近、寺社関連の展覧会続きだった東京国立博物館が、久々に行ったちょっと目先を変えた展覧会です。
多分、この夏もっとも規模の大きな展覧会のひとつだと思います。
アレキサンダー大王の東進を足がかりに、西の文明が東の果てにある日本にまで及ぼした影響を、検証していくというスケールの大きなテーマをかかげた展覧会でした。
前半は、ギリシャ・ローマ系の彫刻作品がならび、後半は、ヘレニズム文化を経て中国・日本へと文化が伝播した過程を、実物とパネルを駆使して示していました。
これは、楽しめる上に、勉強にもなる、なかなかのすぐれものでした。
特に、日本のコーナーにかかげられたパネルは、図像の伝播の過程を実例を用いて説明していて、わかりやすかったです。
おそらく、ここで示されている説は、この展覧会の監修をしている先生の学説をそのまま具現化したものだと思います。
いや、ここまで自分の説をそのまま展示で示すことができたら、大したものだと思います。
本の図版でみるよりも、実物を見たほうがはるかにわかりやすいですし、非常に勉強になりました。
興味のある方は、田辺勝美『毘沙門天像の誕生』を読むべし。・・・というか、これを読んでから展覧会を見た方が、言わんとしていることは、わかりやすくなるかもしれません。
それにしても、この展覧会、お金かかってますねぇ〜。
展示作品の所蔵先を見てみると、ギリシャ、イギリス、フランス、ロシア、アメリカの有名美術館や博物館が名を連ねていました。
まるで、作品自体が東西交流を実践するために東進してきたかのようでした(笑)
これだけあちこちから所蔵品を借りるのってすごくコストがかかっていると思います。さすが東博って感じでしょうか。
でも、正直言って、ローマ系の彫刻は数が多すぎて、ちと、間延びしていたような気がします。後半の展示の方が、内容は締まって見えました。
あと、日本からの出品作品は、ちょっと弱かったかなぁ。。。
東寺の「兜跋毘沙門天立像」が見れるものとばかり思っていたのですが、展示してあったのは、それの模刻作例だったし、快慶の作った執金剛神立像も思っていたよりもかなり小ぶりで、ちょっと物足りなかったです。
なによりも残念だったのが、展示替えのはざ間にいってしまったために、「風神雷神図」が見れなかったことです。
展示ケースに入っていたのは、なんと、印刷された複製画でした。
しかも、この展覧会で展示される「風神雷神図」って、酒井抱一の作品だったんですね。
確か、東博は、光琳の「風神雷神図」を所蔵していたはずなのに。。。
抱一の作品が展示できないんだったら、自分のところで持っている作品の方が格も上なんだし、出し惜しみしないで見せようよ!というつっこみを入れずにはいられませんでした。
出品作品の数も多いし、見ごたえがないわけでもないのですが、ちとテーマが壮大過ぎて、それに見合うだけの水準の作品は集められなかったかな、という印象の展覧会でした。
ステーションギャラリーの展覧会を見た後だっただけに、テンポの悪さを感じずにはいられなかったです。
まぁ、展示の意図はさておき、ギリシャ・ローマの作品はもちろん、ヘレニズム系の作品も、日本ではめったに見られないものが、満載ですので、そのへんに興味のある方は、とりあえず行っておくべき展覧会だと思います。
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