ひまわりの展覧会へのみちしるべ
2003年3月

■2003/03/03 (月) ガース・ウィリアムズ絵本の世界展

小田急百貨店新宿店で開催中の「大草原の小さな家 ガース・ウィリアムズ絵本の世界展 」に行ってきました。

ガース・ウィリアムズ氏は『大草原シリーズ』などを手掛けたアメリカの挿絵画家です。
彼の展覧会は、昨年からずっと全国を巡回していたのですが、やっと東京にも来てくれました(^^)
ずっと楽しみにしていた展覧会だったので、張り切って行ってきました。

それなのに…
この展覧会、内容的には興味深いものだったのですが、会場の環境が悪くて、何とも痛々しい感じがする代物でした。
(今回は、会場に対する悪口がいっぱい書いてあるので、会場にリンクを貼るのは止めました。3月3日まで開催しています。)

会場は、一昨年まで小田急美術館があった場所だったんですが、美術館自体は、現在活動を停止していて、今は催事場として使っているのだと思います。
そこに、暫定的な展覧会場を作ったのだと思うのですが、なかなか凄かったです。
天井は、空調設備がむき出し。殺伐としていました。
作品には、ライトが当たっているんですけど、デパートの売り場のような明るさです。
展示してある作品が、水彩や、鉛筆、コンテなど、非常にデリケートな素材で描かれたものなのに、です。
この種の素材で描かれた作品は、展示する時は、一番神経を使わなくてはならない筈なのに…と素人目で見ても不安を感じてしまいました。
児童書の挿絵だからといって、ここまで舐めた扱いをするのは、あんまりだと思います。

しかも、キャプションには、本文の抜粋はしてあっても、作品の材質や、制作年代などの主要な情報は何も書いていないし、当然解説もなし。
見れば見るほど、不親切でアラばかり目立つ展覧会でした。

その割に、グッズ売り場だけは、充実していているのが、腹が立つというかなんと言うか…。
デパートだけあって、そういうところだけは、配慮がされているんだなぁと、感心いたしました。

で、肝心の内容なんですが…こっちは見ごたえあったと思います。(だからこそ、見せる環境がなっていないのが腹立たしいんですけど★)
材質の表示がないので正確なところは、わからないのですが、『大草原シリーズ』は、鉛筆またはコンテなど、硬質な素材で描かれていたようです。

細かい線を幾重にも重ねて出した質感は、本で見るよりも、はるかに厚みが感じられるにもかかわらず、動きが軽やかな感じがしました。

ただ、どの作品も、ページ番号とかいろいろなメモ描きがしてあったのには、驚きました。
多分、出版社でかなりぞんざいな扱いをされていたんでしょう。勿体無い…

あと、面白かったのは『しろいうさぎとくろいうさぎ』がモノクロで描かれていたことです。
これ、絵本では、淡く色彩が入っていますよね?
何にも説明がないので、憶測ですが、おそらくモノクロ版の上に色の版を重ねて印刷したのではないかと思います。

これは、『大草原シリーズ』の表紙も同じですね。
展覧会のチラシを見て、本よりも輪郭線がはっきりしない、ぼんやりした印刷になっているなぁと思っていたのですが、会場には、線画の作品と、それに彩色した作品がそれぞれ別にあって、並べて展示してありました。
彩色した作品は、線画の上に色を重ねているので、どうしても、輪郭線がぼんやりと透けて見えるような感じになっていました。

これにも、やぱり何も説明がないので(いいかげんしつこい?)憶測ですが、本の表紙では、さっきと同様、印刷段階で色と線を重ねたのではないかと思います。
で、展覧会チラシは、彩色画を単独で使っているのだと思います。
こういう部分は、原画をみないとわからないことだったので、なかなか興味深かったです(^^)

他に、日本では出版されていない作品の原画もあったのですが、これがいかにも、アメコミっぽい、日本人にはちょっと人気出なさそうな感じの作品でした。
この方、かなり絵に幅のある人だったようですね。

そして、何よりも動物を楽しそうに描く人だと思いました。
細かな観察のもとに描かれたと思われる、動物の動きやアングルが、面白いし、なんとも愛らしく仕上っているんです♪
動物を描いた作品を見ていると、自分が生み出したキャラクターに対する、確かな愛を感じさせられました。

私にとってウィリアムズ氏は、『大草原シリーズ』の印象が強いのですが、この人の画業の中では、動物ものこそがメインで、人間を描き込んだ作品の方が、珍しいのかもしれないって思わせるものがありました。

それでも、やぱり思い入れのある作品の方に心引かれてしまって、会場では、『大草原シリーズ』の挿絵にずっと見入っていました(笑)
作品を見ながら、子供の頃、ローラの食べるもの、着るもの、全てに憧れて、読むたびに、どんなものなんだろうと想像していた事を、懐かしく思い出していました。

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■2003/03/03 (月) メトロポリタン美術館展

雨の土曜日、Bunkamura ザ・ミュージアムで3月9日まで開催している「メトロポリタン美術館展」に行ってきました。
雨のおかげで、最終日間近だったにもかかわらず、比較的空いていたので、助かりました。

この展覧会、館蔵品展とはいえ、1895-1930年代に焦点を絞っているため、散漫な印象を与えない、落ちついたトーンの展覧会だったと思います。
しかも、ここに登場しているアーティストさえ押さえておけば、この時代の流れはだいたい把握できると思わせる手堅さと、そのアーティストごとに、それぞれ代表的な作風で描かれた作品を持ってくるあたりは、なかなかのものでした。
メトロポリタン美術館の規模を伺わせるラインナップといえるかもしれません。

ピカソは、様式の変遷もちゃんと押さえられてて、要所要所で存在感を示しているあたりは、さすが20世紀の巨匠、といった感じでしょうか。
ポスターに使われていた「アルルカン」も悪くはないですが、個人的には、同じ青の時代なら「盲人の食事」の方が、青の時代特有の心を締めつけるオーラが感じられる分、オススメな気がしました。
新古典主義時代の様式でかかれた「白い服の女」も、霞がかかったような儚げな画面と、どっしりとした量感を見せる女性の存在感の対称の妙が、面白い作品だったと思います。

展示されている作品は、様式もテーマも多様で、静物画や風景画も多数展示されていたにもかかわらず、印象に残った作品を思い返してみると、不思議とどれも女性像ばかりでした。
なんでかなぁ。。。(^^;

そのなかでも、特に色っぽかったのが、モディリアニの「横たわる裸婦」
この胸元から太腿に至る身体のラインは、緊張感をはらみつつも、女性特有のやわらかな質感を存分に見せつけてくれていました。
また、女性が横たわるベットに使われた、くすんだ赤のトーンが、肌の色を一層きめ細かいものにしているあたりに、この人の鋭い色彩感覚を実感させられました。

そして、これと対をはって色っぽさをみせていたのが、バルテュスの作品。
「目を覚ましたテレーズ」は小学生くらいの女の子が、椅子の上で足をくずしたポーズをとっているのですが、スカートから覗く足の色っぽいこと。。。
見ていてドキドキしちゃいました。

この人の足の描きこみ方って、ちょっと偏執的な感じがして、見ていて飽きないですねぇ(^^)
うつろに空を見ている表情や目線よりも、足の方が、雄弁になにかメッセージを発している気がしちゃうんです。

同じくバルテュスの「山」は、会場で一番の大作だったのですが、山の斜面にたたずむ人物像がすべて、なぜこんな健全な山の中にいるんだろう??と思う退廃性といっちゃっている雰囲気を漂わせていました。
そして、やっぱり太腿を顕わにして横たわる女性も描かれていたりして、この辺りが、まさにバルテュスという感じで、面白かったです。

モディリアニとバルテュスのおかげで、同行者と、ひとしきり、女性の大腿部の美しさについて盛りあがる一時を過ごすこととなってしまいました(^^ゞ
話題としては面白かったけど、ちょっと恥ずかしかったです★

…決して言い訳をするつもりはないのですが、女性の色っぽさにだけ目を奪われていた訳ではありません。

パスキンの「子猫を抱く少女」は、油彩にもかかわらず、パステル調の淡い色彩で描かれた女の子の儚さがたまらなく愛しくなるような作品でした。
また、女の子の腕の中にいる猫が、かわいらしいんですよね〜(^^)
パスキンの描く女の人って、なんとなく病的な儚さを感じてしまって、今まで敬遠していたのですが、認識を改めました。

マティスの作品も何作が展示されていたのですが、「金魚鉢」という静物画が、なんとなく印象に残っています。
平面的な造形の中で、金魚鉢のなかにいる金魚の配置だけが、立体感をもっているように感じられるのが、面白い作品でした。

それから、全然関係無いのですが、同じくマティスの「若い水夫」という作品。
色調がどう見ても長新太さんなのには、びっくりしました。
背景のピンクとか、ホントそっくりなんですよ〜(^^;
長新太さんのルーツを思いもかけず見た気分♪
これも、この展覧会の意外な収穫だったと思います♪♪

まあ、雨の中、頑張って出かけた甲斐はあったと思います。
会期末まで、あと一週間。
一度足を運ぶのも悪くない展覧会だと思います。

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